こんにちは!キャリアコンサルタントの金子めぐみです。
今回は、マミートラックについてです。
マミートラックとは和訳すると「お母さんの競争用の走路」となり、仕事上で男性と同じ走路で競争することをやめた人のための走路という意味です。
母親になることで、女性の生活は大きく変化します。
それは、「育児にとられる体力や時間がある」といった物理的な変化だけではありません。
子どもに対する愛情や夫との関係、自分の家族や夫の家族との関係、そして仕事に対するモチベーションなど目に見えない多くのものも変化していきます。
出産前には順調に出世コースを歩んでいた有能な女性が、
出産後には無能になるということはあり得ないですよね。
出産後だって変わらずに有能な人なのに、プロスポーツ選手でいうところの
「戦力外通告」
をされてしまう…。
なんだかとても理不尽ですね。
それでは、仕事を続けたまま出産育児をする女性が増え続けている現代の
マミートラックを知る世界へまいりましょう!
もくじ
1.マミートラックとは?
1-1.出産後に出世コースから外れたコース
マミートラック(mommy track)とは、母親になったことによってそれまで通りの仕事ができなくなり、出世コースを意味するファストトラック(fast track)から外れたコースで仕事をすることです。
母親になる前は男性同様に仕事をして、結果も出し評価もされていた女性は男性と同じファストトラックで走っていたのに、出産したらママ専用ののんびり走る走路(マミートラック)になってしまうということですね。
NHKが子育て中の女性を支援する複数の団体の協力を得て、インターネットでアンケートを実施し、出産後に復職した女性1,300人から回答を得ました。
それによると、「マミートラックの経験がある」と答えた女性は27.8%。
4人にひとりの女性が経験しているという結果がでました。
マミートラックには、自分が望まないのに周囲がそうしてしまう場合と自分が望んで出世コースから外れる女性とがいるようです。
1-2.自分の希望ではないのにマミートラックに
自分は今までのキャリアを活かして出産後もバリバリ働く人として復帰したいのに、
職場の側が
「子どもがいたら今までと同じ仕事は無理でしょう」
というふうに判断し、時間短縮などの対応をしてくれる代わりに出世コースからは外してしまうという例です。
こちらはNHKの番組で取り上げられた例をまとめました。
都内のIT企業で働くTさんはシステムエンジニアとして開発を手がけたシステムが大手企業にも採用されるなど期待されていました。
Tさんは順調に昇進し、仕事にもやりがいを感じていたといいます。
Tさんは39歳で長女を出産し復職後は短時間勤務で働くことにしました。
すると任されたのは、以前のキャリアとは全く異なる、資料やデータの整理といった仕事でした。
さらに上司からは「フルタイムで働けないと昇進も難しい」と告げられます。
共働きで、ふだんは1人で育児をしているため、フルタイムは厳しいのが現実です。仕事のやりがいも、働き続ける意欲もなくなってきたと言います。
Tさん「全然、自分が必要ない感じに思えてきて、モチベーションもない感じですよね。」
Tさんは、平日は一人で育児をしているのですね。
最近話題になっている「ワンオペ育児」になっているために、時間的には以前と同じように仕事ができなくなってしまいました。
それなのに、仕事の中身まで変更になってしまうのはTさんの能力を無駄にしているようで胸が痛みます。
そして以前はやりがいがあると感じていた仕事に対するモチベーションがなくなってしまったと話すTさんは、育児に対しても前向きになれないのではないかと心配になりました。
マミートラックの原因になっている「ワンオペ育児」についての記事はこちらです(リンク)
1-3.自分がマミートラックを選ぶ女性
会社などの雇用側に「マミートラック」を与えられてしまう女性がいる一方で、自分から「マミートラック」を望む女性もいます。
わたしの知り合いには
「子どもを実際に産んで顔を見て世話をするまでは、自分は絶対にキャリアを捨てずにバリバリ働くと決めていたの。
でも、赤ちゃんを見ていたら『この子が赤ちゃんでいる時間は今しかない』という気持ちになってきて…。
この地域は保育園には問題なく入れるから仕事を辞める必要はないけれど、責任のある仕事を引き受けて周囲に迷惑をかけたりするくらいなら、誰にでもできる仕事を時短勤務で定時までやって帰る方が自分的にも気が楽になっちゃった」
というように、自分からマミートラックを選んだ女性がいます。
とても有能な彼女のことですから、きっと子育てが一段落したらまたお仕事をバリバリ頑張るのだろうなあ、と思います。
ワークライフバランスのとり方は人それぞれですよね。
どの女性も自分の選択に納得できて、
幸せになれたらいいなと思います。
2.マミートラックを回避したいなら
今まで働いてきたキャリアを無駄にしたくない、マミートラックを回避したいという女性はどうすれば良いのでしょうか。
2-1.組織が必要とする人材になる
自分が働く会社などの組織において絶対に必要な人になれば、
出産や育児によってマミートラックに追い込まれることはないと思います。
わたしは若いとき、自分にとっての仕事は「収入を得るためのもの」という認識だったので、そのときどき、身近なところで適当に仕事をみつけていました。
組織といえる規模のところで働いたことがほとんどありません。
ですので、実感としていえるわけではないのですが…
それでも、おそらく組織の中には経営者以外にも「この人がいないと困る」という人はいるのかなあと思います。
そして、女性でもそういう人になれれば「私は今まで通りの仕事をしたい」という希望が通るはずだと考えます。
2-2.結婚や出産前から検討しておく
あなたが今の仕事にやりがいを感じていて、
「この仕事を一生続けたい」
と思っているなら、結婚や妊娠前からいろいろなことを検討すべきです。
今の職場で、産休・育休から復帰した場合に
それまでの仕事をさせてもらえそうか?
マミートラックに追いやられてしまいそうか?
小さな組織だと自分がパイオニアになる覚悟も必要なのかもしれませんね。
そうした場合は産休をとる前から上司などの権限のある人に
「復帰後もバリバリ仕事をさせてほしい」
と伝えておくなどの根回しも必要になってくるでしょう。
もしも
「どう考えてもこの会社にいたらマミートラック行きしかない」
と思えるようなら、早いうちに転職するということも選択肢に入れたほうが良いですね。
転職先を探す際には、女性の先輩たちがどのように復帰しているかを確認するようにしましょう。
2-3.働き方を変える
マミートラックに追いやられないために転職も選択肢にいれると言いましたが、職種を変えずに「働き方を変える」ことができる場合もあります。
それは、従業員として働くのではなく自営業者として経営者になることです。
有能な女性は(わたしと違って・笑)勉強もすべきときにしている方が多いので、学歴が素晴らしかったりするのでおそらく高収入を得ることができる会社に就職できるのだと思います。
いろいろな意味で安定しているといえるのかもしれませんが、自分が望まないのにマミートラックに陥ってしまったり、育児中には思うように仕事ができなかったり、人間関係に悩んだりといったストレスがありそうです。
わたしの場合は、育児を楽しみたかったのでもし自分が会社員だったら喜んで時短勤務のマミートラックをゆっくり走るタイプですが、人間関係の面倒くささは苦手なので自営業という道を選びました。
自営業だと、優秀な方のような高収入を保証はできません。
けれど、それを上回るたくさんのメリットがあると思います。
まず平日の仕事時間を自由に決められるということは、予防接種やお役所の手続きなど平日にすることが多い育児に最適ですし、子どもが病気をしても落ち着いて対処できます。
そして、家事も仕事の合間にできたりもするので「仕事と家庭の両立」みたいなことに関するストレスはものすごく少ないです。
それから…女性が育児をしながら自営業をするメリットはこちらの記事に書いてあります。
母子家庭の生活費について書いた記事なのですが、父親がいればもっと安心というだけで自営業のメリットが書かれているのでよかったら参考にしてくださいね。
マミートラックのない自営業のメリットについてはこちら(リンク)
わたし程度の女性でも、自営業でまじめにお仕事すれば息子と生活していくのに困らないくらいの収入にはなりますから、きっと企業などの組織で認められるほど有能な女性ならもっともっと稼げるんじゃないかとわたしは考えています。
組織の中で働いた経験を活かして、自営業じゃなくて会社を興すことのできる女性もいると思います。
今のあなたのお仕事スキルを自営業(フリーランス)ですることはできそうですか?
もしできるなら、転職の他に自営という選択肢も加えて検討してみてください。
マミートラックを抜けてフリーランスになるための記事はこちら(リンク)
3.マミートラックとファストトラックは自分が決める!
最初に「マミートラックとは」で書いたように、世間では「マミートラック」を出世コースである「ファストトラック」と正反対のもののように定義しています。
けれどそれは、「雇われる」という働き方をしているから。
自営業や会社経営をする女性なら「マミートラックもファストトラックもない」ともいえますし、「マミートラックもファストトラックも自分が決める」ともいえます。
育児中にはお仕事のスピードを落として「マミートラック」にしていても、子どもの手が離れたらいつでも「ファストトラック」にすることができるのです。
わたしの息子は21歳になりました。
大学の卒業はまだですが、一足先に起業をして好きなことを仕事にしはじめています。
本業としてやっていくことができるのか、いつできるようになるかはわかりませんが、彼が必死で仕事をしているのを見ているだけでほんとうに幸せです。
風船業として起業して、息子に『おかえりなさい』が言えるお母さんになりたくて「マミートラック」を走っていたわたしですが、これからはライターとキャリアコンサルタントとして、女性のお仕事を充実させるためのお手伝いをしていこうと決めて加速をはじめています。
運動神経の鈍いわたしなので「ファストトラック」と聞くとぞっとしますが(笑)、自分なりの速さでこれからは進んでいこうと思います。
わたしはこうした働き方をしてきてとても楽しかったですし、今も楽しいです。
わたしに風船があったように、あなたにも何かがあるのではないでしょうか?
ただ単に、どうしたらいいのかわからないから足踏みをしているのではないですか?
ごめんなさい、起業して会社を経営したいという女性には、わたしでは力不足で相談やアドバイスはとてもできません。
けれど、自営業をはじめたいとかフリーランスとして働きたいという女性になら、きっとお役に立てると思います。
とくに、
・子育てが一段落したので仕事をはじめたい
・子育てをしながら仕事もしたい
・自分の好きなことを仕事にしたい
・家事と育児と仕事のバランスを上手にとりたい
・自分がほんとうにやりたい仕事をみつけたい
こんな女性になら、わたしの知恵や経験が役立つはずです!!
「マミートラック」についての記事を書こうと思ったときに、なぜかふと、以前知った「パートのおばちゃんからブックオフの社長になった女性(橋本真由美さん)」が頭に浮かびました。
記事中で紹介できなかったのですが、
「目の前のことを一生懸命やっていたらいつの間にか社長に」
という感じの素敵なお話なので、
もしよかったらこちらでご覧くださいね。
リクナビジャーナル(ブックオフの社長になった橋本さんの記事へ)
マミートラックで仕事のモチベーションが下がってしまうなどということがないように、それぞれの女性が自分自身でオリジナルの「マミートラック」をつくれますように。
わたしがそのお役に立てたらほんとうに嬉しいです。
長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
また別の記事でお目にかかりましょう。